林芙美子自邸
- fusehideto
- 2019年6月5日
- 読了時間: 2分

先日、30度を越す気温のよく晴れた日に林芙美子自邸を訪れました。
きっかけは、建築家の堀部安嗣さんの本で紹介されていたのを目にして。
東西線の落合駅から徒歩10分程度の閑静な住宅街に、緑に埋もれるようにひっそりと建っていました。
急坂の途中に入口の門扉が設けられ、くの字に折れたアプローチを経て玄関にたどり着きます。
その動線と高低差により、門扉付近から建物が見えないつくりになっていました。
林芙美子さんは、「放浪記」などで知られる女流作家ですが、この自邸を建てるにあたり、200冊近くの参考書を集めて建築の勉強をし、良い大工を数か月かけて探し、さらに職人を連れて京都に建築を見に行くということまでしたそうです。
考え方も合理的で、客間よりも、茶の間と風呂と台所など家人が使用する場所にぜいを凝らし、東西南北に風が抜けることを重視したとのこと。
設計は、山口文象が1年かけて練ったとのことですが、クライアントの思い入れは格別のものがあり、一緒に作り上げたという感じなのでしょう。
建物は、平屋の数寄屋造りで、瓦屋根が層を成して重なり美しく、軒が深く、軒先が低く抑えられているため、建物の重心が低く落ち着いた佇まいとなっています。
庭のもみじを中心とした豊かな木々に囲まれているのが印象的で、つづき間を通して切り取られる緑がとても美しく、癒されます。

道路に対して斜めにしたアプローチ

玄関戸。玄関が暗くならないようガラス格子戸となっている。

軒先が低い瓦屋根。一部腰屋根とし、はしごによる小屋裏収納を設けている。

茶の間の桁。8mの丸太梁は、建築中工事を止めてまで待って、林芙美子さん自ら木場で入手したもの。

北側の書庫から次の間、寝室を通して南側の庭の緑が鮮やかに見える。
書庫であっても風通しがよくなるように計画されている様子が分かる。

書斎。当初は納戸として計画されていた部屋らしく収納がしっかり設けられている。
納戸として計画されていた割に、雪見障子が設けられていたり、北側にもしっかり開口を設けられ、抜けのある明るい空間となっている。

アトリエ。最も天井が高く、北側に大開口とトップライトが設けられ、自然光をしっかり取り込む意図が感じられる。

小間天井。竹皮による網代天井。

銅製の雨樋。受け口もきちんとデザインされている。

石蔵。大谷石の外壁はダメージ加工が施され建物のボリュームに合わせてコンパクトに作られている。

照明。玄関、取次の間、客間の照明。住戸の各部屋共通して木と和紙でデザインされており、統一感がある。

アトリエの照明。アイアンと乳白ガラスによるモダンなデザイン。



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